状況によって伝わる感情が変わる、「客観的な感情表現」|小説の書き方

前に「小説の書き方|情景描写って何だろう?」にて、こんなお話をしました。
ですが、場面の構成や全体の流れによっては、同じ一文でも「哀」や「怒」といった、文章単体から想像されるものとは全く違った感情を伝えることができます。

お話をしたので自分でも場面構成と感情表現のことを説明しようと思ったんですけど難しくて……
ちなみに場面構成のお話は、「ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則(著:ロバート・マッキー)」を読むと分かりやすいです。

脚本術なので映画を前提とした本なんですが、小説書きにとってもめちゃくちゃ勉強になります
場面を上手く構成することで登場人物の感情を表現する。
これを私自身が確実に習得しているかと言われると答えに詰まうんですけども。
私にお話しできることは、同じ一文でも状況によっては伝わる感情が変わってくるよね、ということです。
客観的な感情表現の究極系・場面構成で伝える
まず、客観的な感情表現についてお話しします。
小説の書き方として正式な名称があるのかは分からないのですが、当方はこちらの意味でお話ししています。
客観的な感情表現とは
感情を表す言葉を直接使うことなく、読み手に感情を伝える表現方法のこと
上の記事の中では「喜」の感情の例として、下記のものを挙げました。
ハナは笑って飛び跳ねた。
感情の言葉を使わず、登場人物(ハナ)の表情と行動で感情を伝えるよう意識をした文章です。
この一文だけで読むと、ハナの「喜」や「楽」といった感情が伝わってくるかと。
ですが、この一文が書かれている場面によっては、伝わってくる感情が変わってきます。
状況で解釈が変わる感情
ハナは笑って飛び跳ねた。
この文章が書かれているのが、ハナが楽しく遊んでいるところであればそのまま「喜」が伝わるかと思われます。
ですが、もしこのとき、ハナが不仲な両親を前にしながら「笑って飛び跳ね」ていたらどうでしょうか。
もしも、引っ越すことになってしまった仲良しの友達と、最後に遊ぶ日の出来事だったらどうでしょう。
あるいは、罪なき村人たちをなぎ倒した後、呆然と見詰めてくる主人公に対して行ったことだったら?
「喜」だと思われていましたが、ちょっと話が変わってきますね。
最後に出した例は急角度な気がしますけれども。
とにもかくにも「喜」以外のものが伝わってくるようになるかと思われます。
場面を使って伝える
先ほどの例でお話しした、
- ハナが不仲な両親を前にしながら
- 引っ越すことになってしまった仲良しの友達と
- 罪なき村人たちをなぎ倒した後、呆然と見詰めてくる主人公に対して
という部分が、「ハナは笑って飛び跳ねた」で伝わってくる感情を左右します。
ここでは記事で例として、さらっとした説明文で書きましたけど、実際の小説では説明ではなく場面の描写で表現すると良いかと思われます。
小説の中で「○○はこういう過去があったんだ。だからこうなっている」という説明を文章で読むと、そんなにしっかり頭に入ってこないんです。

私だけかもしれないですけど……
物語の中に落とし込んで描かれているところを見るとしっかり頭に残るし、心にも残ります。
あまりしっかりと書き込む必要のないところであれば説明でさらっと書くと良いのですが、読み手の心に残るような印象深さを与えたいのであれば場面として書き込むのが良いかと思われます。
おわりに
客観的な感情表現は、直接感情の言葉を書かないため読み手に伝わる感情に幅があります。
人によって解釈が変わることもある表現です。
ですがその分、前後の場面によって伝えられるものが変わってくることにも面白みがあるかと思われます。
後で登場人物の予想外の過去や内情を知ったことで、「あのときはああいう気持ちであんなことをしていたのか!」と分かると、読書体験として楽しさがあります。
読み手に何を伝えたいかを考えた上で各場面を構成する必要があるため、難しいです。
ですがカチッとハマると読み手はもちろん書き手としても楽しいです。
