noteで掲載されている、短編小説「愛でるもの」を紹介します。
作者は小原由香里(@kumxxxxxxxxo)さんです。小説感想サービスのお試しキャンペーンでの依頼がきっかけで読みました。
5,000字ほどの短編小説です。
冒頭から読者を惹きつけ、「これって何だろう?」という疑問をどんどん浮かばせます。それでいて最後に、読者に考えさせる形で締めているので、世界観にぐいぐい引き込んだまま離しません。
「愛でるもの」の魅力をお伝えします。
あらすじ
「わたし」は両親の仕事の関係で、見ず知らずの土地に滞在することになる。
滞在先で親戚の友達と遊ぶが、気付いたら一人ぼっちになっていた。
散歩中に行きついた不思議な店を見つける。
その店は、普通の店とは違っていて――
少しずつ語られる情景
「わたし」の状況が、地の文で少しずつ語られていきます。その語りも、「こうだ」とはっきりいうのではなく、間接的に話されます。
その語り方が上手く、読んでいる間に、色んなことを考えていました。
- 「わたし」は幼い女の子だろうか
- 「わたし」の家は金持ちなのだろうか
- 「わたし」の両親は不仲なのだろうか
想像させる文章が心地よくて、続きをどんどん読み進めてしまいます。
滞在していた1週間
1日目、2日目、と1日ごとに起きた出来事が語られます。
2日目に見つけた店にいた「お兄さん」との出会いが、「わたし」の全てを変えてしまいます。
普通の店とは違う趣を感じた「わたし」は、お酒を出すところ?
と「お兄さん」に訊ねました。
「お兄さん」の答えはこれです。
「いいえ。ここはお酒を出すところではありません。ここは、大切なものをこの結晶に閉じ込めてずっとずっと愛でることができるようにするお店ですよ」
ここから、「わたし」が色んなものを結晶に閉じこめていくんですが、その結末が、すごいんです。
最後の一文を読んで、「うわぁああああ! こうきたかー!!」と叫んでしまいました。
感想
読み手に想像させる描写をされている点もそうなのですが、この「結晶をつくって愛でる」という流れも考えさせられます。
- どうして「お兄さん」はそんなことができるのか
- 「お兄さん」の目的はなんだったのか
- 「わたし」とはいったい何だったのか
読んだ後も、こんなことを考えていました。読んでいる最中も、読んだ後も、素敵な時間を過ごせる小説でした。
読了後は、noteについたコメントを見るのもおすすめします。開いてみたら、私とは違う考え方をしている人がいたので、「そういう考え方もあるんだ!」と解釈の幅をみることができます。
読んだ人によって、解釈の異なる、雰囲気のある、静かな世界観のお話です。
読み直しても減らない誤字脱字は、スキルを持った人にチェックしてもらいましょう。
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