書いた小説の文字数が少ない!5W1Hで描写を足してみた

小説を書いてみたはいいものの、どうしても文字数が少なくなってしまう、ということがあります。
長編小説を書きたいときは構想からしっかり考えていく必要があります。

根っこから直したいわけじゃなくて

今、ちょっと、ここの、この辺りの文字数だけ増やしたいのよ!
こんなときにちょっと役に立つかもしれない、描写の増やし方についてお話しします。
元となる小説を用意する
今回の方法をお話しするために、元となる小説を用意します。
ここでは、私がざっくりとした小説を書いてみますね。それに描写を足し、文字数を増やしていきます。
山田花子が田中太郎に告白するシーンにします。
花子は田中を待っていた。
田中が来た。
「田中くん、好きです」
「俺も山田さんが好きです」
花子は喜んだ。
あっさりしていますね。
とてもあっさり。
ここに肉付けしていきます。
最初の文字数は50字です。
さて、何字に増えるでしょう。
不足していることを5W1Hで確認する
描写を何処に足すべきか、その小説に問いかけながら決めていきます。
このときに使うのが、5W1Hです。
- When いつ
- Where どこで
- Who 誰が
- What 誰が
- Why 何故
- How どうなるのか
これが5W1Hです。
小説が短い、と感じる箇所に、これを問いかけていきます。
5W1H
いつ(When)の場面なのか
この例文で気になる時間は3つあります。
- 田中を呼んだのは「いつ」なのか
- 田中を待っている今は「いつ」なのか
- 「いつ」から田中が好きなのか
田中を待っているということは、その前に田中を呼び出しているはずです。いったいいつ呼び出したのでしょうか。
そして、それを待っている今はいつなのでしょう。
また、花子はいつから田中を好きなのでしょう。
分からないので、決めてしまいます。
朝、田中を呼んで、夕方の今、待っていることにします。
花子がいつ田中を待っているのかについての疑問に対する文章なので、該当箇所に差し替えます。
花子は今朝、田中に声をかけた。
「今日の夕方、17時に会って欲しい」と。
時計は間もなく、17時を指す。
田中が来た。(略)
88字になりました。
好きになったのがいつかという疑問が残っています。
ですが、そこまで入れると一場面に詰め込み過ぎてしまいそうな気がするので、今回は入れないでおきます。

ショートショートでも、本来ならこの告白場面だけでも読み取ることができるだけの描写をするべきなのですが

ちょっと今は諦めました
何処(Where)で起きている場面なのか
これは何処で起きている出来事なのでしょう。
わざわざ告白する場所として選んで呼び出しているということは、2人が普段いるところとは違う場所であるということになります。
ここでは、公園に呼び出したということにします。
この公園には何あるのでしょうか。
植木? 池?
折角なので、季節感を出して、桜が咲いている公園にします。ついでに名前もつけて、さくら公園にしましょう。
花子は今朝、田中に声をかけた。
「今日の夕方、17時にさくら公園に来て欲しい」と。
時計は間もなく、17時を指す。夕陽で桜がオレンジ色に染まっていた。
田中が来た。
単純に「花子はさくら公園で待っている」と書かず、夕陽で染まる桜の色で待ちぼうけをくらっている様子を表現したのは、ちょっとしたおしゃれ感を狙っています。
これで、111字です。
誰(Who)が動いているのか
これは、山田花子と田中太郎が主人公の小説です。
そもそも、山田花子と田中太郎って誰だよ、という話ですね。
何歳なのか?
子どもなのか、学生なのか、大人なのか、何なのか。
告白するというだけでは何も分かりません。
ここもはっきりさせてやりましょう。
今回は、2人とも高校生ということにします。ただ高校生というだけでは表現しにくいので、卒業式を迎えた高校生ということにします。
花子が田中に想いを告げられるのは今日しかない。今朝、田中に声をかけた。
「卒業式が終わったら、さくら公園に来て欲しい」と。
時計は間もなく17時を指す。(略)
これで、花子達がどのくらいの年齢なのか、想像がつきやすくなりました。
ちなみに、131字になっています。
何(What)をしているのか
今回の例でいえば、何をしようとしているのかは明白です。
花子が田中に告白をしようとしています。
そして、告白する前に、田中のことを待っています。
ここでは、花子がどのくらいの時間を待っているのかについて細かく書きます。そして、田中が遅れている理由についても書いてみます。
時計は間もなく、17時を指す。夕陽で桜がオレンジ色に染まっていた。
田中は生徒会長だったため、他の生徒や教師からも人気がある。遅くなるだろうと覚悟はしていたが、さすがに遅過ぎる。
来ないのではないか。
そんな不安だよぎった。
だが、田中は来た。(略)
少し臨場感が出て来ましたね。
文字数も、210字になりました。
何故(Why)その行動しているのか
何故花子は田中に告白しようとしているのでしょうか。告白をするからには、好きになった理由と告白すると決めた理由があるはずです。
このエピソードを足すと、それだけでかなりの文字数が増えます。ですが、ここでは敢えて、告白シーンに場面を絞り、ショートショートとして描いていきます。
告白前に「○○で○○ということがあったから、田中くんのことが好きです」と台詞に入れてもいいのですが、それではちょっと情緒がないというか、好みではないので、私は入れません。
あくまで好みの問題です。私がエピソードの中に、されげなく盛り込んでいきたい派なので、削ってしまっただけです。告白の前にさり気なく入れる筆力がないともいえます。
結果、どうなる(How)のか
Howはどのようにしてと訳されることが多いですが、ここではどうなるのかという意味で考えていきます。
山田花子は田中太郎に告白して、結ばれる。
これが結果です。
元の文の、
「田中くん、好きです」
「俺も、山田さんが好きです」
花子は喜んだ。
だけでは、あっさりし過ぎていますね。
台詞を変えずに、地の文の描写を増やすだけで何処まで変わるのかを見てみたいので、台詞は増やさずに2人が結ばれる様子を描いてみます。
諸々を更に足して、全体に調整を加えた文章が以下のようになりました。
花子が田中に想いを告げられるのは今日しかない。今朝、田中に声をかけた。
「卒業式が終わったら、さくら公園に来てほしい」と。
時計は間もなく17時を指す。夕陽で桜がオレンジ色に染まっていた。
田中は生徒会長だったため、他の生徒や教師からも人気がある。遅くなるだろうと覚悟はしていたが、さすがに遅過ぎる。
来ないのではないか。
そんな不安がよぎった。
だが、田中は来た。
公園に着くと、花子の姿を見つけて駆け寄って来る。
目の前に田中が来ると、花子はすうっと、深く息を吸った。
「田中くん、好きです」
照れと恥ずかしさが一気に押し寄せ、頬が赤くなるのを感じた。顔を上げることができない。
「俺も、山田さんが好きです」
思わず、顔を上げた。
田中の顔が赤く見えるのは、夕陽のせいだけではない。
田中の手がぎこちなく、花子の手に触れた。
風で舞う桜の花びらは、二人を祝福してくれるようだった。
だいぶ増えました。
これで377字です。何故好きになったのかのエピソードを放置しましたが、327字増えました。

構成も何も考えていない、全くの無から生み出したにしては上出来じゃない!?
おわりに
冒頭でお話ししましたように、もっとがっつりとたくさんの文字数の小説を書きたいときはこのやり方だけではうまくいきません。

10万字越えの小説を書きたいけど、どう頑張っても3000字しか書けない、というようなときですね
ですが、自分の小説の描写に何が足りないのかを知りたいときは、今回の5W1Hに基づく考え方をするのは有効かな、と感じました。
余談:書いた小説の感想を感想サービスで依頼してみた
ちなみに、この小説、ココナラで感想サービスを利用しています。

「何故好きになったのか」の背景が伝わらない問題については、感想サービスを受けた際に指摘されています。

ブログ記事で例文で紹介するために書き上げたショートショートだったので、依頼したときは「これでいいかなあ」と思っていました。
ですが、感想を聞いてみると、やっぱりきちんと理由も書けばよかったなあ、と思います。

あと、自分でも「ここはちょっとどうかなあ?」と思っているところは、やはり読んだ人も問題に感じるんだな、と
今回の物語は更に調整して、800字を越えになった小説をアルファポリスで公開しています。
合わせて、表紙イラストもココナラで依頼して描いていただきました!
